愛知県 名古屋市

名古屋市の土砂災害対策改修費補助金を解説

佐藤
実家が名古屋市内にあって、土砂災害特別警戒区域に指定されているらしいんです。指定される前から建っている家なんですが、移転ではなく、このまま住み続けるために補強工事をしたいと思っています。こういう場合に使える補助金はありますか。
田中
あります。名古屋市の「土砂災害対策改修費補助金」です。土砂災害特別警戒区域内にある既存の建築物で、区域に指定される前に建てられたものについて、土砂災害に対して安全な構造にするための改修工事(外壁改修や塀の設置など)を行う場合に、改修費用の一部を補助する制度です。同じ案内ページには、住み続けるのではなく安全な場所へ移転する場合の[がけ地近接等危険住宅移転事業費補助金](/program/112)という別の制度もありますが、今回のように住み続けながら対策工事をしたい場合はこちらの制度が対象になります。
契約前に交付決定を受ける必要があります

改修工事の請負契約を締結する前に、補助金の交付決定を受ける必要があります。見積もりを取った段階で先に工事業者と契約を結んでしまうと、補助の対象外になります。必ず着工前、契約前に名古屋市へ事前相談してください。

名古屋市土砂災害対策改修費補助金の申請手続きの流れ
対象区域確認、事前相談書提出、交付申請、着手届提出と工事、完了実績報告と補助金請求までの流れ

どんな制度か

佐藤
そもそも、土砂災害特別警戒区域に指定されるとどうなるんですか。古い家だと何か不都合があるんでしょうか。
田中
土砂災害特別警戒区域は、がけ崩れや土石流などの土砂災害が発生した場合に建築物が損壊し、住民に著しい危害が生じるおそれがある区域として指定されるものです。区域の指定後に建てる住宅は、建築基準法施行令第80条の3の規定に適合する構造(土砂災害に対して安全な構造)にする必要がありますが、区域に指定される前から建っていた住宅はこの規定に適合していないことが多く、いわゆる既存不適格の状態になります。名古屋市の土砂災害対策改修費補助金は、こうした既存不適格の住宅を、この規定に適合する安全な構造に改修する工事費用の一部を補助する制度です。
佐藤
対象になる建築物の条件を詳しく教えてください。
田中
公式ページでは、次の4つの要件をすべて満たすものとされています。1つ目は「土砂災害特別警戒区域内にあり、区域に指定される前に建てられた住宅及び居室を有する建築物」であること、2つ目は「建築基準法施行令第80条の3の規定(土砂災害特別警戒区域内における建築物の構造方法)について既存不適格」であること、3つ目は「改修の結果、土砂災害に対して安全な構造となること」、4つ目は「補助金交付申請を行う時点で現に使用し、かつ今後も使用するもの」です。<span class="textMarker">区域指定後に新築・購入した住宅は2つ目の既存不適格の要件を満たさないため対象外になります。</span>自分の家が土砂災害特別警戒区域に入っているかどうかは、愛知県の「マップあいち」内にある「土砂災害情報マップ」、または愛知県砂防課が公表している区域指定・解除の状況のページで確認できます。
制度の基本情報
項目内容
自治体愛知県 名古屋市
制度名土砂災害対策改修費補助金
主な対象土砂災害特別警戒区域内にあり、区域指定前に建てられた既存不適格の住宅等の改修工事
対象工事外壁改修や塀の設置など、建築基準法施行令第80条の3の規定に適合させる土砂災害対策改修
補助額改修工事費の23%(千円未満切り捨て)、上限96万6千円
申請受付期間補助事業を実施する年度の11月末日まで(土日祝の場合は直前の開庁日まで、予算件数に達した時点で終了)
注意点工事請負契約前に補助金交付決定を受ける必要がある(事前相談必須)
問い合わせ名古屋市住宅都市局建築指導部建築安全推進課建築防災担当

対象者・対象住宅・対象工事

佐藤
「既存不適格」という言葉が少し難しいのですが、具体的にはどういう状態を指すんですか。
田中
建築基準法施行令第80条の3は、土砂災害特別警戒区域内にある建築物が満たすべき構造方法(外壁の構造や塀の設置など、土砂の衝撃に耐えられるようにする基準)を定めています。区域の指定は後から行われるため、指定前からその場所に建っていた住宅は、この基準ができる前の構造のまま建てられていることが多く、現行の基準に適合していない状態になります。これが「既存不適格」です。名古屋市の交付要綱でも、対象建物の要件として「住宅等の敷地が特別警戒区域に指定される前に建築された住宅等で、建築基準法施行令第80条の3の規定に適合しない構造であるもの」と定められており、公式ページの4要件と同じ内容が確認できます。
佐藤
対象になる工事の内容も教えてください。
田中
公式ページには「建築物の外壁改修や塀を設置するなど土砂災害対策改修を行い、建築基準法施行令第80条の3の規定に適合させること。」と書かれています。つまり、単なるリフォームではなく、改修の結果として建築基準法施行令第80条の3の規定に適合する安全な構造になることが条件です。交付要綱の定義でも「土砂災害対策改修」は「建築基準法施行令第80条の3の規定について既存不適格の住宅等を、当該規定に適合し、安全な構造とするために行う外壁の改修や塀の設置等をいう。」とされていて、外壁改修や塀の設置が具体例として挙げられています。実際にどのような改修が必要かは、建物の構造によって異なるため、構造設計を行う建築士(1級建築士または2級建築士)が、改修計画が規定に適合することを確認したうえで申請することになります。
佐藤
「補助金交付申請を行う時点で現に使用し、かつ今後も使用するもの」という要件は、どういう意味ですか。
田中
申請の時点で実際に人が住んでいる(使用している)住宅であり、改修後もそのまま住み続ける(使用し続ける)予定であることが条件、という意味です。すでに空き家になっている住宅や、改修後すぐに取り壊す予定の住宅は対象になりません。なお交付要綱には、建築基準法の規定に著しく違反していないこと、国や地方公共団体など公の機関が所有する建築物は対象外であること、この補助金と「がけ地近接等危険住宅移転事業費補助金」の両方を同じ住宅で重複して受けることはできないこと、本制度の対象工事について国や他の地方公共団体の補助金等を別途受けていないことも条件として定められています。

補助額・補助率

佐藤
補助額の「23パーセントかつ上限96万6千円」という書き方が、少しわかりにくいです。具体的にどう計算されるんでしょうか。
田中
交付要綱の第6条を確認すると、計算の仕組みがはっきり書かれています。まず、補助の対象になる経費(土砂災害対策改修に要する工事費)には420万円という上限があります。そのうえで、補助金の額は「対象経費に23%を乗じて得た額」とされ、こちらにも96万6千円という上限が設けられています(千円未満の端数は切り捨てです)。420万円の23%がちょうど96万6千円になるので、<span class="textMarker">工事費が420万円未満であれば「工事費×23%(千円未満切り捨て)」の額が補助され、工事費が420万円以上になっても補助額は96万6千円が上限</span>という関係になっています。たとえば工事費が200万円なら200万円×23%で46万円、工事費が500万円でも補助額は上限の96万6千円にとどまります。
佐藤
パンフレットには「上限額96万6千円、かつ、土砂災害対策改修費用の23%以下の額」とも書かれていました。これも同じ意味ですか。
田中
はい、同じ計算を別の言い回しで説明しているだけです。「96万6千円を上限としつつ、工事費の23%を超えない額」という意味なので、結局は工事費の23%相当額と96万6千円のいずれか低い方が実際の補助額になります。自分の工事費でいくらになるか不安な場合は、事前相談の段階で窓口に見積書を見せて確認するのが確実です。

申請前の注意点

佐藤
申請できる期間はいつまでですか。
田中
公式ページには「補助事業を実施する年度の11月末日まで」と明記されています。ただし2つ注意点があります。1つは、11月末日が土曜日・日曜日・祝日にあたる場合は、その直前の開庁日が締め切りになるという点です。もう1つは、11月末日より前であっても、その年度の予算件数に達した時点で受付が終了するという点です。早めに動いても予算上限に達してしまえば受け付けてもらえないので、工事を検討し始めた段階でできるだけ早く相談することをおすすめします。
佐藤
契約や着工のタイミングで気をつけることはありますか。
田中
一番重要なのは、改修工事の請負契約を結ぶ前に、補助金の交付決定を受けておくことです。公式ページにも「改修事業にかかる契約を締結する前に補助金交付決定を受ける必要があります。必ず事前にご相談ください。」とはっきり書かれています。パンフレットにも「補助金交付決定を受ける前に工事請負契約や工事に着手している場合は、補助金を交付することができません。」と注意喚起されています。<span class="textMarker">見積もりを取ったあとに先へ契約を進めてしまうと補助の対象外になる</span>ので、見積もりの段階から名古屋市の窓口に相談しながら進めることが大切です。また、交付要綱では事前相談書の提出も「契約を締結する日より前かつ補助金交付申請をする日より前」までと定められているので、事前相談→交付申請→契約という順番を崩さないようにしてください。
事前相談から補助金受け取りまでの流れ
  1. 自宅が土砂災害特別警戒区域かどうかを「マップあいち」等で確認する
  2. 工事の契約・申請より前に事前相談書を名古屋市へ提出する
  3. 工事着手前かつ当該年度の11月末日までに交付申請を行う(予算件数に達すると終了)
  4. 交付決定の通知を受けたあとに工事請負契約・着工し、着手届を提出する
  5. 工事完了後、完了した日から起算して30日を経過する日、または当該年度の2月末日の、いずれか早い日までに完了実績報告書を提出し、確定・請求を経て補助金を受け取る

他制度との併用・使いどころ

佐藤
最初に話に出た「がけ地近接等危険住宅移転事業費補助金」とは、どう使い分ければいいですか。
田中
[がけ地近接等危険住宅移転事業費補助金](/program/112)は、危険な住宅を取り壊して安全な場所へ移転する場合に使う制度で、今回の土砂災害対策改修費補助金は、住宅を残したまま安全な構造に改修して住み続ける場合に使う制度です。どちらも土砂災害特別警戒区域に指定される前に建てられた住宅が対象という点は共通していますが、目的が「移転」か「改修して住み続ける」かで異なり、交付要綱上も同じ住宅等で両方の補助金を重ねて受けることはできません。どちらが自分の家に合うかは、建物の状態や改修にかかる費用、移転にかかる費用などを比較しながら、事前相談の段階で窓口と相談して決めるのがよいと思います。両方の制度は「土砂災害特別警戒区域内の住宅等に対する補助制度のご案内」のページにまとめて掲載されています。
佐藤
最後に、相談先と参考資料を教えてください。
田中
問い合わせ先は名古屋市住宅都市局建築指導部建築安全推進課建築防災担当で、電話番号は052-972-2935、ファクス番号は052-972-4159です。窓口の受付時間は午前9時から午前11時30分、午後1時から午後3時30分です。制度の詳しい要件や様式は、公式ページに掲載されている「名古屋市土砂災害対策改修費補助金交付要綱」や「土砂災害対策改修費補助事業事前相談書」で確認できます。改修する住宅の構造によって必要な図面や証明書類が変わってくるので、事前相談の段階で担当窓口に必要書類を確認しておくと手続きがスムーズです。名古屋市のほかの住まい関連の補助・助成制度は、名古屋市の住まいの支援制度一覧でまとめて確認できます。