神奈川県 川崎市

川崎市 特定建築物等耐震改修等事業助成制度を解説(学校・病院・福祉施設等の耐震診断・設計・改修助成)

佐藤
川崎市で小規模な有料老人ホームを運営しています。昭和55年に建てた建物で、そろそろ耐震診断を受けたほうがいいと言われているのですが、戸建て住宅向けの耐震改修助成とは別の制度があると聞きました。どんな制度ですか。
田中
それはおそらく「特定建築物等耐震改修等事業助成制度」のことですね。川崎市が実施している助成制度で、学校・病院・旅館・老人ホームなど多数の人や避難弱者が利用する建築物、危険物の貯蔵・処理施設、そして一定の規模要件を満たさない小規模な福祉施設などを対象に、耐震診断・耐震設計・耐震改修にかかる費用の一部を助成するものです。木造の戸建て住宅やマンションを対象にした制度とは別枠で、建物の用途と規模で対象かどうかが決まります。
佐藤
戸建て住宅向けの制度とは完全に別物なんですね。
田中
はい。川崎市には木造戸建て向けの木造住宅耐震改修助成制度、マンション向けのマンション耐震改修等事業助成制度、そして今回ご相談のような学校・病院・福祉施設・危険物貯蔵施設などの大規模・公共的な建築物向けのこの制度の、大きく3つの系統があります。有料老人ホームのように不特定多数や避難弱者が利用する施設は、この特定建築物等耐震改修等事業助成制度の対象になる可能性があります。
対象建築物の区分を自己判断しない

この制度の対象建築物は(1)耐震改修促進法第14条第1項に掲げる建築物、(2)同法附則第3条第1項に掲げる建築物、(3)小規模福祉施設等という3つの区分に分かれ、区分によって耐震診断・耐震改修の補助上限額が異なります。建物の用途・規模・利用形態によってどの区分に当たるか(あるいは対象外か)が変わるため、自己判断せず、必ず耐震改修等の契約前に川崎市まちづくり局市街地整備部防災まちづくり推進課耐震化支援担当へ事前相談してください。

川崎市特定建築物等耐震改修等事業助成制度の対象確認から完了報告までの流れ
対象建築物の確認、事前相談、耐震診断・設計、計画承認と交付申請、改修と完了報告の5ステップ

どんな制度か

佐藤
あらためて制度の位置づけを整理してもらえますか。
田中
川崎市の「特定建築物等耐震改修等事業助成制度」は、特定建築物等の所有者が耐震診断・耐震設計・耐震改修を実施する際に、市が費用の一部を助成する制度です。目的は震災に強いまちづくりの推進で、担当は川崎市まちづくり局市街地整備部防災まちづくり推進課耐震化支援担当です。公式ページの公開日は2023年9月27日、直近の更新日は2026年4月1日となっています。
制度の基本情報
項目内容
実施主体川崎市(まちづくり局市街地整備部防災まちづくり推進課耐震化支援担当)
制度名特定建築物等耐震改修等事業助成制度
対象建築物(1)耐震改修促進法第14条第1項に掲げる建築物(学校・体育館・病院・劇場等の多数利用建築物、危険物貯蔵・処理施設、耐震診断義務化沿道建築物) (2)同法附則第3条第1項に掲げる建築物(不特定多数・避難弱者が利用する大規模建築物、大規模な危険物貯蔵・処理施設) (3)小規模福祉施設等(病院・診療所・幼稚園・保育所・老人ホーム・身体障害者福祉ホーム・児童厚生施設等で法第14条第1項の規模要件に満たないもの)
対象工事耐震診断、耐震設計、耐震改修
補助額(診断)補助率2/3、上限230万円(法第14条建築物・小規模福祉施設等が対象。法附則第3条第1項建築物は診断の助成対象外)
補助額(設計)補助率2/3、上限140万円(3区分とも共通)
補助額(改修)補助率23%、上限1000万円(法第14条建築物・小規模福祉施設等)または上限4000万円(法附則第3条第1項建築物)
事前手続き契約前に事前相談が必須(事前相談票を使用)
評価の要件耐震診断・耐震設計は耐震判定委員会等の評価が必要。耐震改修はその評価を受けた耐震設計に基づくか、耐震改修促進法第17条第3項の計画認定を受けたものが必要
受付期間申請を行った年度の1月末日までに完了報告が行えるよう申請。募集終了日の明記はなし
優先発注補助金額が100万円を超える場合、市内中小企業者による入札または市内中小企業者2者以上からの見積りが必要
代理受領制度令和5年度から利用可能
問い合わせ先川崎市まちづくり局市街地整備部防災まちづくり推進課耐震化支援担当(電話044-200-3017)
佐藤
補助率や上限額が診断・設計・改修で全部違うんですね。
田中
そうです。診断は補助率2/3で上限230万円、設計は補助率2/3で上限140万円、改修は補助率23%で上限1000万円または4000万円です。改修の上限額が建築物の区分で2段階に分かれているのがこの制度の特徴で、法第14条に掲げる建築物と小規模福祉施設等は上限1000万円、法附則第3条第1項に掲げる建築物は上限4000万円まで助成されます。延べ面積による限度額も別途あるので、具体的な金額は防災まちづくり推進課に建物の規模を伝えて確認するのが確実です。

対象建築物・対象工事の区分

佐藤
対象になる建築物をもう少し具体的に教えてください。
田中
3つの区分があります。1つ目は耐震改修促進法第14条第1項に掲げる建築物で、学校・体育館・病院・劇場など多数の人が利用する一定規模以上の建築物、火薬類や石油類などの危険物を一定量以上貯蔵・処理する施設、そして川崎市耐震改修促進計画が指定した道路沿いの一定高さ以上の建築物(耐震診断義務化沿道建築物)が含まれます。2つ目は同法附則第3条第1項に掲げる建築物で、病院・店舗・旅館など不特定多数が利用する建築物や学校・老人ホームなど避難弱者が利用する建築物のうち大規模なもの、そして大規模かつ敷地境界線からの離隔距離が一定以下の危険物貯蔵・処理施設です。3つ目は小規模福祉施設等で、病院、診療所(病床を有するものに限る)、幼稚園、保育所、老人ホーム、身体障害者福祉ホーム、児童厚生施設などのうち、法第14条第1項の規模要件に満たない建築物が対象になります。
佐藤
うちの有料老人ホームはどの区分に当たりそうですか。
田中
老人ホームは「避難弱者が利用する建築物」として法附則第3条第1項の区分に入る可能性と、規模が小さい場合は小規模福祉施設等に入る可能性の両方があります。どちらに当たるかで耐震改修の補助上限額が1000万円か4000万円かという大きな差になるので、ここは必ず防災まちづくり推進課に建物の規模・用途・利用人数を伝えて、区分の判定を受けてください。自己判断で進めると、想定していた補助額と実際の区分が食い違うおそれがあります。
佐藤
対象になる工事の内容は何ですか。
田中
耐震診断、耐震設計、耐震改修の3つが助成対象です。耐震診断・耐震設計には耐震判定委員会等による内容が適正であるという評価を受けることが必要で、耐震改修の助成を受けるには、その評価を受けた耐震設計に基づく改修であること、または耐震改修促進法第17条第3項に基づく建築物の耐震改修計画の認定を受けた計画に基づく改修であることが必要です。単に工事をすれば助成されるわけではなく、診断・設計の段階で適正性の評価を通す必要がある点は押さえておいてください。

申請前の注意点

佐藤
申請する前に準備しておくことはありますか。
田中
まず最も重要なのは、耐震改修等の契約を結ぶ前に、必ず防災まちづくり推進課へ事前相談を行うことです。公式ページには「まずは助成の対象になるかの確認のため、事前相談が必要になります。必ず耐震改修等の契約の前に下記お問い合わせ先まで御相談ください」と明記されています。契約してしまった後に相談しても、対象として認められない可能性があります。
佐藤
完了報告の期限についても教えてください。
田中
公式ページには「申請を行った年度の1月末日までに当該事業の完了報告が行えるよう申請をお願いします」とあります。つまり年度内(1月末日まで)に完了報告できるスケジュールで申請する必要があるということです。工期が長くなりそうな大規模改修の場合は特に、着工前の段階で防災まちづくり推進課と完了報告までのスケジュールをよく相談しておくことをおすすめします。
佐藤
補助金額が大きい場合に特別な手続きはありますか。
田中
あります。補助金額が100万円を超える場合は、「補助金等交付事業に係る市内中小企業者への優先発注に向けた基本方針」に基づき、市内中小企業者による入札、または市内中小企業者2者以上からの見積りが必要になります。改修の補助上限額が1000万円や4000万円に及ぶこの制度では、多くのケースでこの優先発注の手続きが関係してくるはずです。診断士・施工者が市内中小企業者に該当するかどうかは、市の入札情報サイトで公開されている確認用業者名簿で確認できます。
特定建築物等耐震改修等事業助成制度の申請の流れ
  1. 所有する建築物が対象建築物の3区分(法第14条建築物・法附則第3条第1項建築物・小規模福祉施設等)のいずれかに当たるか確認する
  2. 耐震改修等の契約を結ぶ前に、防災まちづくり推進課耐震化支援担当へ事前相談票を用いて相談する
  3. 耐震診断・耐震設計を実施し、耐震判定委員会等による内容適正の評価を受ける
  4. 計画承認申請書・交付申請書を提出する(補助金額100万円超の場合は市内中小企業者への優先発注の手続きも必要。オンライン申請にも対応)
  5. 評価を受けた設計に基づき耐震改修を実施し、申請年度の1月末日までに完了報告書を提出する
佐藤
代理受領制度というのも気になります。
田中
令和5年度から、耐震改修等の助成金について代理受領制度が利用できるようになりました。通常は所有者が助成金を受け取ってから施工者に工事費を支払う流れですが、代理受領制度を使うと施工者等が助成金を直接受け取れる仕組みが用意されています。資金の立て替え負担を抑えたい場合に活用できる制度なので、詳しくは防災まちづくり推進課のご案内資料で確認するか、窓口で直接相談してください。

他制度との併用・使いどころ

佐藤
川崎市の耐震関連の制度を整理すると、うちのような施設はどれを見ればいいですか。
田中
川崎市の耐震関連の助成制度は、対象建築物の種類で大きく分かれます。木造の戸建て住宅・共同住宅・長屋・店舗等併用住宅(平成12年5月31日以前着工)が対象の[木造住宅耐震改修助成制度](/program/126)、鉄筋コンクリート造等のマンションが対象の[マンション耐震改修等事業助成制度](/program/107)、昭和56年5月31日以前着工の木造住宅向けに部屋単位で命を守る空間を確保する[耐震シェルター・防災ベッド設置助成制度](/program/129)、そして今回ご説明した学校・病院・旅館・福祉施設・危険物貯蔵施設など多数の人や避難弱者が利用する建築物向けの特定建築物等耐震改修等事業助成制度です。有料老人ホームや診療所、幼稚園、保育所などの施設を運営している場合は、戸建て・マンション向けの制度ではなく、この特定建築物等耐震改修等事業助成制度を確認する必要があります。
佐藤
最後に、申請を検討している施設向けのアドバイスをお願いします。
田中
まず自分の建築物が対象建築物の3区分のどれに当たるか(あるいは対象外か)を、自己判断せずに防災まちづくり推進課へ確認してください。区分によって耐震改修の補助上限額が1000万円か4000万円かという大きな差になるためです。そして契約前の事前相談を必ず行い、耐震診断・耐震設計の段階で耐震判定委員会等の評価を受けること、補助金額が100万円を超える場合は市内中小企業者への優先発注の手続きが必要になること、申請年度の1月末日までに完了報告できるスケジュールで動くことの4点を押さえておけば、大きな手戻りは避けられるはずです。

公式情報

川崎市 特定建築物等耐震改修等事業助成制度を解説(学校・病院・福祉施設等の耐震診断・設計・改修助成) | 住まい制度データベース