埼玉県 さいたま市
さいたま市の耐震補強等助成事業(戸建住宅の耐震補強設計・工事)を解説
耐震・防災要確認
佐藤
実家がさいたま市にある古い木造の一戸建てで、以前に耐震診断を受けたら「安全な構造ではない」と言われました。建て替えるほどの予算はないので、今の家のまま補強する方法を探しているんですが、何か使える制度はありますか。
田中
それなら、さいたま市の「耐震補強等助成事業(戸建住宅の耐震補強設計・工事)」が使えるかもしれません。耐震診断で「安全な構造でない」と判定された戸建住宅について、補強のための設計費用と工事費用の一部を、それぞれ助成する制度です。設計だけ、工事だけ、あるいは設計と工事をまとめて申請する3つのメニューがあります。
着工・契約前に申請が必須、令和8年度から申請先が変更
公式ページには「各助成を受けるためには、着手前に申請を行う必要があります」と明記されています。設計を発注したり工事を契約したりした後に申請しても対象になりません。また、令和8年度から申請先が建築総務課に変更されているため、以前の担当課の情報をもとに動かないよう注意してください。予算に達すると年度途中でも交付ができなくなる点も公式ページに記載されています。

どんな制度か
佐藤
さいたま市には建て替え向けの助成制度もあると聞いたんですが、この制度とは違うんですか。
田中
違います。さいたま市の[耐震補強等助成事業(戸建住宅の建替え工事)](/program/84)は、危険な戸建住宅を解体して同じ敷地に建て替える工事が対象です。一方、今回の制度は建物を解体せず、今ある戸建住宅の耐震性を高めるための「補強設計」と「補強工事」が対象になります。同じ「耐震補強等助成事業」という要綱の中にある、別のメニューだと考えてください。今の家に住み続けたい場合はこちらの補強メニュー、建て替えを考えている場合は建替え工事のメニュー、というように住まいの方針によって選ぶ制度が変わります。
佐藤
メニューが3つあるという話でしたが、それぞれどう違うんですか。
田中
1つ目が「耐震補強設計」、補強工事の前提となる設計図面を作る費用への助成です。2つ目が「耐震補強工事」、実際に柱や壁を補強する工事費用への助成です。3つ目が「総合的耐震補強工事」で、これは設計と工事をまとめて申請する場合のメニューになります。設計と工事は別々の年度に申請することも可能なので、まず設計だけ申請して、翌年度に工事を申請するという使い方もできます。
制度の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自治体 | さいたま市 |
| 制度名 | 耐震補強等助成事業(戸建住宅の耐震補強設計・工事) |
| 対象工事 | 耐震補強設計、耐震補強工事、総合的耐震補強工事(設計+工事) |
| 助成額(設計) | 費用の3分の2、上限20万円/棟 |
| 助成額(工事) | 費用の2分の1、上限120万円/棟(設計助成を受けた分は差引) |
| 助成額(総合) | 費用の5分の4、上限140万円/棟 |
| 事前申請 | 必須(着手前に建築総務課へ交付申請) |
| 申請時期の目安 | 令和8年度は4月1日から受付開始、実績報告は原則1月31日まで |
| 担当窓口 | さいたま市建設局建築行政部建築総務課企画係 |
対象になる住宅・対象者
佐藤
うちの実家が対象になるか心配です。どんな住宅なら対象になりますか。
田中
対象となる戸建住宅は、次の2パターンのどちらかに当てはまり、かつ耐震診断で「地震に対して安全な構造でない」と判定されている必要があります。1つ目は「昭和56年5月31日以前に着工・建築された戸建住宅」であること。2つ目は「平成12年5月31日以前に工事着手した、木造軸組工法・地上2階建て以下・延べ面積500平方メートル以下の戸建住宅」であることです。どちらの場合も、2戸の長屋で親族のみが居住している住宅(いわゆる2世帯住宅)を含みますが、延べ面積の2分の1以上を居住用に使っていることが条件です。
佐藤
耐震診断はどこで受けても対象になりますか。
田中
いいえ、誰が診断してもよいわけではありません。木造住宅の場合は「さいたま市既存建築物耐震診断資格者名簿(木造)」に登録された建築士(診断資格者)が行った診断であることが条件です。木造以外の構造の住宅では、建築士事務所に所属し、登録資格者講習を受けた建築士が行った診断であることが必要です。まだ診断を受けていない場合は、市の「耐震補強等助成事業(戸建住宅の耐震診断)」や、無料で受けられる「木造住宅耐震診断員派遣事業」を先に利用して、安全でないという判定を受けてから、この補強設計・工事の助成を申請する流れになります。
佐藤
申請できるのは、家の持ち主本人だけですか。
田中
助成金の申請者になれるのは「当該建築物を所有している方」、または「所有者の2親等以内の親族」です。申請者以外にも所有者がいる場合は、その全員が耐震補強を実施することに承諾している必要があります。実家の名義がご両親のままで、子であるあなたが手続きを進めたい場合でも、2親等以内の親族であれば申請者になれます。
補助額と補助率
佐藤
具体的にいくら助成されるのか、もう少し詳しく教えてください。
田中
まず耐震補強設計は、設計に要した費用の3分の2に相当する額が助成されます。上限は20万円/棟です。次に耐震補強工事は、工事に要した費用の2分の1に相当する額が助成されますが、対象費用には上限があり、住宅の延べ床面積に1平方メートルあたり3万9900円を乗じた額が限度になります。工事の助成上限額は120万円/棟ですが、すでに補強設計の助成を受けている場合は、その金額を差し引いた額が上限になります。いずれも千円未満の端数は切り捨てです。
佐藤
設計と工事を別々に申請するのではなく、まとめて申請したほうが得なこともありますか。
田中
あります。「総合的耐震補強工事」として設計と工事をまとめて申請すると、両方に要した費用の5分の4に相当する額が助成され、上限は140万円/棟になります。設計3分の2、工事2分の1をそれぞれ別に申請するより、まとめたほうが助成率が高くなる仕組みです。ただし、住宅金融支援機構の「リ・バース60」という耐震改修利子補給制度を利用する場合は上限額が変わり、耐震補強工事は48万9300円、総合的耐震補強工事は57万5000円が限度額になります。リ・バース60を使うかどうかで有利不利が変わるので、利用を検討している場合は事前に住宅金融支援機構のホームページで制度内容を確認してください。
申請前の注意点
佐藤
補強設計や補強工事の中身にも、何か条件はありますか。
田中
あります。まず、現行の耐震基準に適合させるための補強設計を行い、それに基づいた補強工事であることが前提です。木造の戸建住宅の補強設計は、原則として「さいたま市既存建築物耐震診断資格者名簿(木造)」に登録された設計者が行う必要があります。木造以外の戸建住宅では、建築士事務所に所属する建築士が設計を担当します。そして補強工事そのものは、建設業の許可を受けている業者が施工する工事であることが条件です。設計者や工事施工者は申請者自身が選定しますが、相談先に迷う場合は市が公開している「さいたま市耐震補強事業協力事業者名簿(参考)」から探すこともできます。
佐藤
予算がなくなったら助成を受けられなくなる、という話も出ていましたね。
田中
そのとおりです。公式ページには「予算を超えた場合は、助成金の交付ができませんので、あらかじめご了承ください」と明記されています。年度の途中でも予算がなくなれば新規の交付決定が止まる可能性があるということなので、対象になりそうだと分かった時点で早めに建築総務課へ相談することをおすすめします。
申請の流れ
佐藤
実際の手続きは、どんな順番で進めればいいですか。
田中
耐震補強工事(設計を含まないメニュー)を例にすると、大きく5段階です。まず耐震診断で「安全な構造でない」との判定を受けること、次に補強設計を依頼し、着手前に建築総務課へ交付申請書と必要書類を提出することです。書類審査を経て交付決定通知を受け取ったら、そこで初めて設計や工事の契約・着工に進みます。工事の完了後は実績報告書や工事写真、契約書・領収書の写しを提出し、額の確定通知を受けてから請求書を提出すると助成金が振り込まれます。
申請から助成金受け取りまでの流れ(耐震補強工事の場合)
- 耐震診断を受け、「安全な構造でない」との判定を受ける
- 補強設計を依頼し、着手前に交付申請書(様式第14号の2)と必要書類を建築総務課へ提出する
- 「交付決定通知書」を受け取ってから、施工業者と契約し工事に着手する
- 基礎配筋や壁の軸組み設置時に特定工程報告書を提出し、完了後は実績報告書・工事写真・契約書と領収書の写しを提出する
- 「交付額確定通知書」を受け取り、助成金請求書(様式第8号)を提出して助成金を受け取る
佐藤
必要な書類はどんなものが多いですか。
田中
交付申請の段階では、所有者と2親等以内の関係が確認できる書類(住民票の写しや戸籍謄本など、申請者が所有者と異なる場合)、耐震補強工事費内訳書、現況写真、助成金額算定書、住宅の登記事項証明書や納税通知書など建築時期・所有者が確認できる書類、配置図・各階平面図、補強設計概要書や補強設計図、工事実施前後の耐震診断書などが必要です。書類の種類が多いので、建築総務課の窓口やホームページで最新の様式一覧を確認しながら準備を進めてください。なお、令和7年度から電子申請システムでの手続きも可能になり、それ以外の手続きは電子メールでも申請できます。
佐藤
申請の期限はいつまでですか。
田中
令和8年度は4月1日から受付を開始します。実績報告は原則として、申請した年度(4月1日以降)の1月31日までに提出する必要があります。助成金の請求は、助成額決定通知を受けた年度の3月末日までです。補強設計と補強工事は別々に申請する仕組みで、設計を今年度、工事を翌年度というように別の年度に分けて申請することも可能です。ただし、それぞれの年度内で「着手前申請→実績報告→請求」の流れを完結させる必要があるので、年度末に慌てないよう早めに動き始めてください。
他制度との使いどころ
佐藤
さいたま市には他にも住宅の地震対策の制度があるんですよね。使い分け方を教えてください。
田中
大きく3つの選択肢があるとイメージしてください。今の家に住み続けながら建物全体の耐震性を上げたいなら、今回の「耐震補強設計・工事」のメニューです。建物自体が古く、補強より建て替えたほうが合理的な場合は、[耐震補強等助成事業(戸建住宅の建替え工事)](/program/84)を検討します。そして、家全体の補強までは予算的に難しいけれど、寝室だけでも地震から命を守りたいという場合は、耐震シェルターや防災ベッドを設置する「耐震シェルター等設置支援事業」という制度もあります。ただしこのシェルター等の助成を利用すると、今回の耐震補強等助成事業は利用できなくなると案内されているので、家全体を補強する予定があるなら、先にどちらを使うかよく検討してから申請してください。
佐藤
制度の詳しい内容や、自分の家が対象になるかを確認したいときは、どこに聞けばいいですか。
田中
さいたま市建設局建築行政部建築総務課企画係が窓口です。所在地は〒330-9588さいたま市浦和区常盤六丁目4番4号のさいたま市役所内、電話番号は048-829-1539、ファックスは048-829-1982です。さいたま市役所の開庁時間は8時30分から17時15分まで(土曜日、日曜日、祝日、休日、年末年始を除く)なので、その時間内に問い合わせてください。郵送やオンラインで申請する場合も、事前に電話で確認したうえで進めるよう案内されています。
公式情報
佐藤
最新の情報は、どこで確認すればいいですか。
田中
さいたま市の耐震補強等助成事業(戸建住宅の耐震補強設計・工事)のページで確認できます。このページには「さいたま市既存建築物耐震補強等助成事業要綱」や、要綱の取り扱い、耐震補強利用手引きなどのPDF、各種申請様式もまとめて掲載されています。ページの更新日は2026年8月4日で、令和8年度から申請先が建築総務課に変更されたお知らせも載っています。要綱や助成上限額は改正されることがあるので、申請前に必ず最新版を確認してください。
佐藤
最後に、この制度を検討している人に伝えたいポイントは何ですか。
田中
一番大事なのは「先に設計・工事を発注してから申請」ではなく「先に申請して交付決定を受けてから発注・着工」という順番を守ることです。そのうえで、耐震診断で「安全な構造でない」と判定された戸建住宅であること、補強設計・工事とも登録された設計者や許可を受けた業者に依頼すること、予算がなくなる前に早めに建築総務課へ相談することの3点を押さえておくと安心です。建て替えやシェルター設置など似た制度もあるので、住まいの方針に合わせてどのメニューが合うか、窓口で相談しながら決めてください。