神奈川県 川崎市
川崎市マンション耐震改修等事業助成制度
耐震・防災要確認
佐藤
川崎市内の分譲マンションで管理組合の理事をしています。築45年ほどで旧耐震基準の建物なんですが、この前の総会で「そろそろ耐震診断だけでもやろう」という話が出ました。ただ工事まで考えると費用がかなりの額になりそうで、二の足を踏んでいます。マンション向けの補助制度はありますか。
田中
川崎市には「川崎市マンション耐震改修等事業助成制度」があります。分譲マンションの管理組合が耐震診断・耐震設計・耐震改修を行う際に、市が費用の一部を助成する制度です。個人の戸建て住宅向けではなく、区分所有のマンション管理組合が申請主体になる点が特徴で、旧耐震基準の中高層マンションを対象に、震災に強いまちづくりを進めるための助成として運用されています。理事をされているマンションが要件に当てはまれば、診断から改修まで段階を追って使える制度です。
佐藤
対象になるマンションの条件を詳しく教えてください。
田中
大きく分けて7つの条件があります。1つ目は昭和56年5月31日以前に建築確認を受けて着工されたものであること。2つ目は鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、または鉄骨造で、地階を除く階数が3以上であること。3つ目は店舗や事務所と住宅が混ざった複合用途のマンションの場合、住宅部分の床面積の合計が専有部分全体の床面積の合計の3分の2以上であること。4つ目は独立して住居として使われている専有部分の数が6以上であること。5つ目は管理組合の代表者が暴力団員でないこと(管理組合が法人の場合は代表者・役員全員)。6つ目は耐震設計を行う場合、耐震診断の結果として地震に対して安全でないと判断されていること。7つ目は耐震改修を行う場合、耐震判定委員会等による適正評価を受けた耐震設計、または法律にもとづく耐震改修計画の認定を受けたものにもとづく改修であることです。理事をされているマンションが旧耐震基準で3階建て以上、専有部分6戸以上であれば、まず入口の条件はクリアしていそうです。
工事や設計の契約前に必ず市へ申請してください
この制度は、耐震診断の結果「地震に対して安全でない」と判断されて初めて耐震設計に進み、耐震判定委員会等の評価や法にもとづく計画認定を受けた耐震設計にもとづく改修だけが耐震改修の助成対象になります。診断→設計→改修の各段階で、契約・着手の前に市への申請と手続きを済ませておく必要があります。見積りを取るところまでは自由に進めても構いませんが、承認前に契約や工事契約を結んでしまうと、その部分は助成の対象外になるおそれがあるため、必ず事前に防災まちづくり推進課へ相談してください。

どんな制度か
佐藤
そもそも「耐震改修等」という言葉には、具体的に何が含まれているんですか。
田中
この制度でいう耐震改修等は、耐震診断・耐震設計・耐震改修の3つを指します。耐震診断は、実測やコンクリートのコア抜きなどの現地調査と設計図書にもとづく構造計算によって、建物の耐震性能を診断するものです。耐震設計は、診断の結果、地震に対して安全な構造であることが確かめられなかった場合に、耐震診断士が行う耐震改修の計画・設計です。耐震改修は、その設計にもとづいて施工者が実際に行う工事と、診断士による工事監理を指します。理事をされているマンションの場合、まずは耐震診断を行い、その結果次第で耐震設計・耐震改修へと段階を進めていく流れになります。
制度の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自治体 | 神奈川県 川崎市 |
| 制度名 | 川崎市マンション耐震改修等事業助成制度 |
| 対象 | 分譲マンションの管理組合(区分所有法上の管理組合) |
| 対象マンション | 昭和56年5月31日以前着工、RC造・SRC造・S造で地階を除く階数3以上、住宅部分床面積が専有部分全体の3分の2以上、専有部分の数が6以上など |
| 耐震診断の助成 | 診断費用と耐震判定委員会判定費用の合算額(税抜)の3分の2、1住戸あたり5万円限度 |
| 耐震設計の助成 | 設計費用と耐震判定委員会判定費用の合算額(税抜)の3分の2、1住戸あたり5万円限度 |
| 耐震改修の助成 | 改修費用(税抜)の3分の1、1住戸あたり50万円限度(改修費用は5万1700円/平方メートルを限度) |
| 受付期間 | ページ上に固定の締切日の記載なし(要綱にもとづく通年運用、予算状況は事前確認が必要) |
| 申請窓口 | 川崎市まちづくり局市街地整備部防災まちづくり推進課耐震化支援担当(044-200-3017) |
対象工事と補助額の詳しい内容
佐藤
まず耐震診断の補助額から詳しく教えてください。
田中
耐震診断にかかる費用と、耐震判定委員会の判定にかかる費用を合算した額(消費税を除く)の3分の2が助成され、千円未満は切り捨てです。ただし1住戸あたり5万円が限度になります。たとえば理事をされているマンションが30戸だとすると、単純計算では上限は150万円になりますが、実際の診断費用が上限を下回ればその3分の2が助成額です。耐震判定委員会というのは、耐震診断・耐震設計の内容が適切かどうかを判断する、学識経験者などで構成された委員会のことで、既存建築物耐震診断・改修等推進全国ネットワーク委員会に登録された委員会を指します。
佐藤
耐震設計の補助はどうですか。
田中
耐震設計についても、設計費用と耐震判定委員会の判定費用を合算した額(税抜)の3分の2が助成され、こちらも1住戸あたり5万円が限度です。耐震診断とほぼ同じ考え方の助成メニューだと捉えてもらえれば大丈夫です。
佐藤
一番気になる、実際の耐震改修工事の補助額を教えてください。
田中
耐震改修にかかる費用(税抜)の3分の1が助成され、1住戸あたり50万円が限度です。加えて、助成の対象になる耐震改修費用そのものにも上限があり、5万1700円/平方メートルが限度とされています。つまり、改修費用が単純に高額であっても、この面積単価の上限を超えた部分は助成計算の対象に含まれません。たとえば理事をされているマンションが40戸で、1戸あたりの改修費用が90万円程度かかったとすると、3分の1は30万円となり、50万円の限度内に収まる計算です。実際の金額は施工内容や見積りによって変わるので、正式な額は市への申請時に確認してください。
佐藤
補助金額が大きくなる場合、何か特別なルールはありますか。
田中
あります。この制度には「補助金等交付事業に係る市内中小企業者への優先発注に向けた基本方針」というルールがあり、補助金額が100万円を超える場合は、市内中小企業者による入札、または市内中小企業者2者以上からの見積りが必要になります。マンション全体で見ると助成総額が100万円を超えるケースは珍しくないので、施工業者を選ぶ段階から、この優先発注の条件を意識しておく必要があります。診断士や施工者が市内中小企業者に該当するかどうかは、市が案内している確認方法にもとづいて事前に確かめられます。
申請前の注意点
佐藤
申請の流れで特に気をつけることはありますか。
田中
まず大前提として、耐震設計は診断結果で「安全でない」と判断された場合のみ、耐震改修は耐震判定委員会等の適正評価を受けた設計、または法にもとづく耐震改修計画の認定を受けた設計にもとづくものだけが対象になります。手続きの流れとしては、事前相談票の提出から始まり、川崎市マンション耐震改修等事業計画承認申請書(1号様式)による計画承認申請、計画に変更があった場合の変更申請書(4号様式)、工事に着手した際の着手届(12号様式)、完了後の完了報告書(18号様式)、そして助成金交付申請書(8号様式)の提出という順番で進みます。様式はオンライン申請にも対応していますが、申請書等の様式以外の添付書類一式は防災まちづくり推進課へ郵送する必要があります。
佐藤
助成金の受け取り方にも選択肢があると聞きました。
田中
令和5年度から「代理受領制度」が利用できるようになっています。通常は管理組合がいったん工事費用の全額を施工業者に支払い、後から助成金を受け取る形になりますが、代理受領制度を使うと、市から施工業者へ直接助成金相当額が支払われる形にできるため、管理組合が一時的に立て替える負担を軽くできます。資金繰りが気になる場合は、事前相談の段階でこの制度についても窓口に確認しておくとよいでしょう。
佐藤
マンションの管理組合であれば、どこでも申請できるんですか。
田中
いいえ、注意が必要です。管理組合の代表者が暴力団員でないこと(法人の場合は代表者・役員全員が該当しないこと)が要件になっています。また、複合用途のマンションでは住宅部分の床面積割合や、専有部分の数といった建物の構造的な条件も細かく定められているので、まずは対象マンションの7つの条件をひとつずつ照らし合わせることが最初のステップになります。
申請までの流れ
- マンションが昭和56年5月31日以前着工・RC造やS造で階数3以上など、対象の7条件に当てはまるか確認する
- 防災まちづくり推進課耐震化支援担当(044-200-3017)へ事前相談票を提出し、募集状況や進め方を確認する
- 耐震診断を実施し、耐震判定委員会等の判定を受けたうえで、契約前に助成の手続きを行う
- 診断結果にもとづき耐震設計を行う場合は、計画承認申請書(1号様式)を提出し、承認を受けてから契約する
- 承認された設計にもとづく耐震改修工事を行い、着手届・完了報告書を経て助成金交付申請書を提出する
他制度との併用・使いどころ
佐藤
耐震改修をすると、税金面でも優遇があると聞きました。この助成制度と一緒に使えますか。
田中
はい、性質が異なる別の優遇措置として、所得税の特別控除と固定資産税の減額があります。今回の助成制度が耐震診断・設計・改修にかかった費用そのものを補助するのに対し、これらの税制優遇は改修後の税負担を軽くする仕組みです。固定資産税の減額や所得税控除の申請には住宅耐震改修証明書が必要になる場合があり、こちらもオンライン申請に対応しています。証明書の様式は国土交通省のホームページにある「住宅リフォームの減税制度で使用する証明書・告示・動画について」から確認できます。耐震改修を計画する段階で、助成制度と税制優遇の両方を合わせて資産税の窓口にも確認しておくと、活用漏れを防げます。
佐藤
最後に、実際に申請を検討する場合、まず何をすればいいですか。
田中
まずは理事会や管理組合として、マンションが対象の7条件に当てはまるかどうかを確認し、そのうえで防災まちづくり推進課耐震化支援担当に電話やメールで事前相談することをおすすめします。制度は年度ごとに助成額や運用が見直されることがあり、実際に令和8年4月には助成額の拡充が行われています。管理組合単独で判断せず、耐震診断士や施工業者、そして市の窓口の三者に相談しながら、契約前の承認手続きを漏れなく進めることが、助成を確実に受けるための一番のポイントです。
公式情報
佐藤
公式ページと問い合わせ先をまとめて教えてください。
田中
制度の詳細は川崎市マンション耐震改修等事業助成制度のページで確認できます。制度の根拠となる要綱は川崎市マンション耐震改修等事業助成制度要綱に掲載されています。問い合わせ先は川崎市まちづくり局市街地整備部防災まちづくり推進課耐震化支援担当で、所在地は〒210-8577川崎市川崎区宮本町1番地、電話番号は044-200-3017、メールアドレスは50bomati@city.kawasaki.jpです。助成額や優先発注の基準額、募集状況は年度によって変わることがあるため、実際に申請を検討する際は、必ず最新の公式ページと窓口で最新の条件を確認してください。